2025/08/21 14:41

40〜60歳代は、心血管疾患、心不全や生活習慣病の芽が静かに伸び始める年代です。

予防医療の視点で最も費用対効果が高い一手は「運動」と「十分なたんぱく質」です。

 

 まずは運動です。ウォーキングなどの有酸素運動も、スクワット等のレジスタンス運動も、血圧・脂質・糖代謝の指標を総合的に改善します。多くの研究結果からも、適切な運動により心血管リスク低減や血圧低下が一貫して示されています。また、心不全の患者さんでは運動療法が運動耐容能と生活の質(QOL)を有意に押し上げることもわかっています。皆様の日常に適度な運動を取り入れることはとても重要です。


 次にたんぱく質です。中高年以降では“同じ量でも筋肉になりにくい”ため、1.0–1.2 g/体重kg/日を目安に(例:体重60kgで60–72g/日)。1食あたり25–30g、ロイシン2.5–2.8gを含む「しっかり1品」を乗せると合成が高まり、運動効果を最大化できます。中年期からの“質の良いたんぱく”は、健康長寿にも直結します。臨床研究では、たんぱく質(特に植物性)摂取が、身体/精神・認知の良好さを満たす「ヘルシーエイジング」の達成確率を有意に押し上げました。

 

 私の臨床経験では、日々の食事は植物性たんぱくを“土台”にし、不足分を乳由来(ホエイなど)で補う方法が実践しやすいと考えています。「運動×ホエイ(乳清)」の併用では、LDLコレステロールと総コレステロールが有意に低下し、12週以上の継続で中性脂肪も低下します。さらに、中高年から後期高齢でも「たんぱくの十分摂取」は筋力や機能低下の抑制と関連します。握力や移動能力などの低下リスクを和らげる観察研究が複数報告されているので、やはり筋力維持が老化予防に大切なことは間違いありません。

 

「動く×摂る」をセットにする――これが、中高年の“予防貯金”を最短で増やすコツです。

 

LEX代表医師
総合内科専門医/循環器専門医
土肥 智貴